「初心者におすすめDAWって何?」というのは、これから音楽を始めたいみなさんがブチ当る最初の壁であり、経験者にとっても『初心者の方に質問された時になんて答えるのが正解なのか』について悩んでしまう、まさに永遠のテーマです。
今回はこのテーマについて、休日のネコの作編曲メンバー3人で語り合ってみようと思います。
まず、メンバーのDAWの歴史をまとめてみる
というわけで二人に集まってもらったんですけど、ことの発端としてはですね、最近僕の友人周りで『音楽を始めたい』っていう人がちょいちょい観測されていて。で、それでみんな必ず訊くわけですよ。『初心者におすすめのDAWって何?』って。
あー、はいはいはい。よくある質問ですね。
初心者におすすめ…そんなもんなくない…?
正直、答えのない質問だと思うんだけれど、僕らってそれぞれ別のDAWを触ってきて、それでお仕事とかしてきてるわけじゃない。それで、一旦僕らの視点で『それぞれのDAWの良いところと悪いところ』を考えて、ちょっと整理してみたいなと思って。
究極言えば《好きなDAWつかえ!》になっちゃうもんね。
そうなんよ。それで、まず一旦それぞれのDAW遍歴を確認したいんだけど、みなれんはどういう歴史をたどってきたの?
今はLogicをメインにしつつ、Studio Oneをマスタリングで使ってるね。歴が長いのはStudio Oneだから、Studio Oneのことなら語れるかなあ。
はじめたての頃はMacに入ってたGaragebandを使って、ある日、ArturiaのMIDI鍵盤を買った時にBitwig StudioっていうDAWがついてきたんだけれど、いわゆるAbleton Liveみたいなビートメイク系のDAWで、ポップスをやる上で使いづらかったんだよね。それで、みんな大好きCubaseに移ったんですよ。
で、Cubase使い始めたんだけど、当時はドングルっていうUSBの認証システムがあって。ある日そのドングルが壊れちゃったんだよね。
あっ……
悲しすぎるやつじゃん
結局ドングルは買い直したんだけど、『また壊れるくらいならドングルがないDAWの方がいいな』ってなって。それで目をつけたのが、CryptonのVOCALOIDシリーズを買った時に付いてきたStudio Oneだったんだよね。で、そのままアップグレードして。
そういえばボカロについてたね。直接的なきっかけはやっぱりボカロに付いてきたってのが大きいの?
そうだね。結果的にアップグレードも安く済んだし、アップグレードしたらMelodyne(ピッチ補正ソフト)がついてくるっていうのもデカくて。
Melodyneついてくるの正直めちゃくちゃ羨ましいなと思ってる…。BONくんは?
僕は、生まれてこの方Cubase、一筋ですね……
…曲を作るっていう原体験でいうと、昔とあるゲームに『自分で曲を作れる』機能があったゲームがあって。
【LittleBigPlanet】でしょ?
正解。言ってしまえばサンドボックス系のゲームなのかな。その中にシーケンサーみたいなツールがあって、当時自分が好きだった曲を耳コピしてたんだよね。で、その後はずっとCubaseを使い続けてきてて。
Cubaseにした決め手はなんだったんです?
まあこれは、最初から『ボカロPをやりたい!』って思って曲作りを始めた、っていうことと、あと自分が音楽学校にいた時の師匠がCubaseの人だったから、っていうところがあるかな。
間違いない。先生とか、好きなアーティストが使ってるDAWを親と思うみたいな現象あるよね。
Cubase触り始めたのも学校入ってからだったからね(笑)めたさんは?
僕は元々、やってるジャンルがクラシック音楽だったんだけど、最初は楽譜を書きたくてGaragebandをいじり始めて、その後はちゃんと楽譜を書くソフトとしてfinaleを使い始めたんだよね。
それで、その後ポピュラーもやりたくなってLogicを使い始めて。お仕事の関係でCubaseもいじったりしたんだけれど、メインのDAWはずっとLogicって感じかな。
日本のシェア率No.1DAW:Cubase
さて、それぞれのDAWを確認したところで、それぞれのDAWの推しポイントとダメポイントについて語ってみようか。……じゃあまずは、巷で「日本シェアNo.1」と名高いCubase使いのBONくんからね。
まず前提として『初心者に』って話だと思うので、その目線からの話なんだけれど…。まず真っ先におすすめできるポイントが「コードトラック」よねえ。あの機能さえあれば、音楽理論とかに強くない人でも、それなりのレベルで打ち込みが出来てしまう。
横の、声部の流れとかも考慮してくれるってこと?
そうそう。ちゃんとやってくれるんですよ。手軽にハイレベルなものを作れるのがポイント高いですね。
もう一つは操作性。MIDIノートの編集が十字キーでほぼ完結してて、ツールの切り替えも右クリックひとつでできるから、ショートカットを覚えなくてもいいっていうのは大きいですね。
あとは……ちょっと中・上級者向けの話になるかもしれないんですけど、VariAudioという存在がありまして。まあ、CubaseについてるMelodyneみたいな機能なんですけど、これの性能が良いんですよ。
正直、ピッチ修正だけをみるならMelodyneとほぼ変わらないんじゃないかくらい綺麗にやってくれて、他のDAWについている機能と比べて一歩抜きん出てる。そこが強いポイントかなと。
なるほど…。
僕が一つ、Cubaseの『圧倒的な強さ』だと思っているポイントがあって。それが日本語のTipsがめちゃくちゃ多いってことなんですよね。なにかわからないことがあったら、日本語でググれば一発で解決するパターンが多い。
あー、確かに!
最近はインターネットメディアの発達もあって、日本語の情報も昔に比べて増えたけれど、それでもCubaseの日本語情報の多さは凄まじいっすよね。
例えばLogicだと、問題解決しようと思うと一番上にAppleのページが出てきて、説明が細かすぎて全然解決できないとかザラで。
最近はSleepfreaksさんとかがあってTipsも増えたけど、それでもFL StudioとかAbleton Liveとかはまだまだ日本語情報は多くない印象があって、何かわからないことが出てくると英語の壁にぶつかるみたいなのはあるよね。
あと何よりユーザーが多いから、友達に解決策を教えてもらえるパターンが多い(笑)
周辺機器を買った時に入門用のCubaseがついてくる、みたいなことあるもんね。
手に入りやすさあるよね。オーディオインターフェースの「UR」シリーズとか、配信者御用達の「AG03」とかについてくるから。
個人的には、Cubaseの強みで一番思うのは「VOCALOIDとの連携の高さ」かなあ。Piapro Studioを立ち上げなくても完結するのがいいね。
『ボカロPやるならCubase!』みたいな風潮あったもんね。逆に、Cubaseのここがダメ、みたいなところはある?
今はなくなったけど、ドングルはよろしくなかったよね(笑)
最悪です。そら使うの辞めるわって(笑)
みなれんのCubase離れ最大の原因じゃん(笑)
あとは視認性が個人的に好きじゃなかったかな。UIがちょっと昔っぽいというか。
確かにUIはダサいね……でも、打ち込みに関して言えば、あの古臭い視認性というか、変にスタイリッシュじゃない、のっぺりした感じが逆にわかりやすくて、打ち込みしやすかったりもするからなぁ。
個人的に気になるポイントとしては、内臓されてる音源とかプラグインの音質が、最近の価値観でいうとあまり良くないかなと。前は評価されてたのかもしれないけど、現代では……ちょっとチープな感じが否めないなと。
ちょっと一昔前というか。まあ時代性ですよね。現代のニーズにあった音ではないというか。
初心者さんだと『最初からDAWも買って、外部音源も買うぜ!』みたいな人って少ないと思うのよ。そこで付属音源がチープだと、モチベが下がることはあるかなあとか思うよね。
近年シェア率を伸ばすDAW:Studio One
じゃあ、次Studio Oneの話しようか。好きポイントとダメポイント。
好きポイントは、まずUIがカッコいいんですよ。Studio Oneって、Cubaseの開発に関わってたエンジニアが作ってて、後発のソフトということもあって、従来のDAWの使いづらかったところを改善してる感じが好きなんだよね。
音源も、VSTとAUどっちも対応してるのよ。使いたいフリー音源がVSTだけで使えませんでした〜、みたいなことがない。
特にMacユーザーは苦い思いしてるよね多分(笑)
あとね、無料版だと使える音源とか限られてるんだけれど、付属音源もなかなかいいんですよ。特にピアノ音源とかお気に入りで。
キースイッチとかもちゃんと用意されてるから、こだわって使えばそれなりのことができる。初心者の人がやるぶんには、外部音源はほとんど買わなくて良いかなと思うくらいにはクオリティは高いかな。
あとミックス・マスタリング用のプラグインの質がすごくいい。機能面でプロクオリティのプラグインがたくさんあって、特にEQとかめちゃくちゃいいんだよね。
ミックスとかマスタリングとか、絶対そのうち通る道だもんね。
Studio Oneだと単体でマスタリングまでできちゃうってのも強いね。連携もいいから、微調整したいものが出てきた時とかも便利だし。Cubaseだと、WaveLabっていうソフト買わなきゃいけなかったりするじゃない?
そうそう。
あと思いつくのは、周辺機器との連携の良さかな。作ってる会社がハードの機器も出してて、オーディオインターフェースでDAW自体を操作できたりとかして。
一生Studio Oneで行くぜ!ってなった時に、周辺機器も含めてPreSonus製品で揃えておけば、大体なんでもできるんじゃないか、説。
ちなみに、後発のDAWであるStudio Oneだけど、気になるところとかダメだなって思うところはあったりする?
…………ほぼほぼ、ないね!!!(笑)
なんか、「他のDAWに出来てStudio Oneにできない」みたいなことがないんだよね。逆はあるんだけど。そこは後発のDAWならではの強みかな。
個人的に気になるところがあるとすれば……クォンタイズの性能があまり良くない気がするくらいかな。いいDAWです。
話ちょっと前後しちゃうんだけど、Cubaseのダメなとこもう一つ思いついたわ。「m4a音源が読み込めない」こと。
そうなんだ(笑)
これね、Apple信者激おこ案件なんですよ。変換できないと詰んじゃうんだよね。リファレンスにしたいなーって思ってiTunesから持ってこようとしても、一発で持って来れない。
Studio Oneはなんでも読み込めるんですよ(笑)読み込み時の詳しい設定もできるし。
いいよね〜。Cubaseは老舗だからか、柔軟性っていう観点では弱いなぁと思うな。
_次回へ続く。